インドの広告業界が7月23日、ムンバイで開催されたET Brand World Summitで「Impressions Are Dead」を掲げ、リーチ・総インプレッション偏重の計測からアテンション指標への移行を公式に打ち出した。CMOと大手パブリッシャーが並んで、滞在時間、音声オンでの視認、その後のブランドリコールを新たな評価軸に据えるという。一国の業界宣言にとどまる話ではない。米国でもIAB/MRCが業界初のアテンション計測ガイドラインをすでに公表しており、広告計測の刷新は世界の潮流になりつつある。
サミットで示された認識は明快だ。AIが介在するフィード消費が標準になった環境では、「表示された」ことを数えるインプレッションは実質を失っており、広告が本当に注意を獲得したかを測らなければ、メディア投資の説明がつかない。宣言に名を連ねたのは広告主側だけでなく媒体社側も含まれる。露出量を売ってきた側が自ら「量の指標」からの脱却を打ち出した点に、この動きの本気度がある。
国際的に見れば、この宣言は孤立した動きではない。米国では2025年11月、IABとMRC(Media Rating Council)が業界初となるアテンション計測ガイドライン(Version 1.0)を公表し、乱立していたベンダー各社の「アテンション」の定義と開示要件に共通の枠組みを与えた。2026年6月にはARF(Advertising Research Foundation)がアテンション指標の妥当性検証プロジェクトのフェーズ3結果を公表し、指標と広告成果の関係の検証が続いている。宣言のインド、標準化の米国と役割は違えど、向かう方向は同じだ。
ここで重要なのは、計測の刷新がもはや選択の問題ではないという点だ。縦型フィード、ショート動画、CTV、リテールメディア、そしてAIの回答内表示と、デジタルの接点はこの数年で一気に増えた。ソーシャルメディアを含む断片化した接点を横断して広告が働く現在、ラストクリックや単純リーチだけでは広告の成果、とりわけ認知目的の成果は測れない。従来の指標体系が壊れたのではなく、指標が前提としていたメディア環境のほうが先に変わってしまった。
同時に、留保も必要だ。「Impressions Are Dead」はあくまでスローガンであり、実態はインプレッションを捨てる話ではなく、アテンションを補完シグナルとして重ねる「指標の積層設計」への移行である。アテンション指標はベンダー間で測定手法も定義もまだ揃っておらず、横並びの比較には耐えない。IAB/MRCのガイドラインはまさにその不揃いを直すための第一歩だ。
今後の論点は、日本への波及だろう。認知目的のキャンペーンをリーチ×フリークエンシーで報告し、獲得をラストクリックで測る、という定型のレポーティングをどこから組み替えるか。媒体社側がアテンション在庫をどう商品化するかも含め、KPIの再設計は広告主・代理店・媒体社の三者で足並みを揃えて初めて機能する。宣言が先か、実務が先か。インドの一手は、その順番を考えるきっかけになる。
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参考リンク
Weekly Digital Marketing Dispatch: July 18–24, 2026 (Boston Institute of Analytics)
Attention Measurement Guidelines (IAB)
IAB/MRC Attention Measurement Guidelines Version 1.0, November 2025 (PDF)
ARF Attention Validation Initiative Phase 3, June 2026 (PDF)
